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編集の毒 [Thoughts]

良い訳文て、「だってこうにしかなりようがないじゃん」と言われるようなもの、なんじゃないかと思っている。

さんざんこねくり回してジタバタしたあげく、できあがったものを人に見せて「だってこういうふうにしかなりようがないじゃん」と言われたら、それが理想(なかなかそんなことできないけど)。

それって、何かに似てる気がすると思ってずっと気になっていたのだけど。



思い出したのは、もう10年以上も前に、地方のがんばってる中小企業の社長さんにインタビューしてレポートにまとめるという仕事をしたときのこと。

話をうかがった社長さんのひとりに草稿を送って「内容に問題がないか確認してください」と言ったら、「だって自分がしゃべったまま書いてあるんだから問題も何もないよ」と笑いながら言われた。

そのときの自分にとって、これは最大級の誉め言葉だった。

なぜならその社長さんのレポートは、あちこち飛び回る(正直言って支離滅裂な)3時間分のインタビューメモを書き起こした後で、それをさんざん編集して組み立てたものだったから。

整理して組み替えて、筋が通らないところを前後の流れから推測して補い、リズムと流れを整える。

本人にとってその文章が「自分が話したまま」に見えたということは、その編集が成功したということだよね。

と、わりに最近まで思っていた。



今読んでも、そのレポートには確かに真実が書かれているように見える。

福井市内から車で山あいに40分近く入ったところにある、その小さな建設会社の若い社長さんは、一字一句そこに書いてある通り話をしたように思える。そのときの表情まではっきりと目に浮かぶ。

でも、ぼくは言葉足らずな社長さんの話をアウトライナーに取り込み、流れとリズムとメロディを整えながら、相当な量の言葉を補ったはず。

その補われた(ぼくの)言葉はどこに溶けてしまったんだろう。そして、社長さん本人が本当にそれを一字一句自分が話したことだと思ったのだとしたら。



文章に編集(エディット)は不可欠だけど、すんなり入ってくる、心地よく、気持ち良く、整えられた文章には毒がある(たいていの心地よく気持ちよい外部刺激がそうであるように)。

編集という行為の中に潜む毒を忘れないようにしよう、と思う。特に他人の言葉に対しては。

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コメント 1

た

そういうのを僕は毒ではなく「隠し味」と言ってます。
あ、違うかな?

by た (2014-04-07 22:19) 

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